視点


私は昔から文章、というか小説を書くのが好きで、最初の日の日記にも趣味として明記したりしましたが、
なのでカテゴリ分け、読んだ本については『本』、自分で書くことの方に関する話は、『小説』と分けてみようと思います。



その時書いていた話は、主人公の男の子(医者の卵)と、彼が思いを寄せる女性との恋物語(の、ようなもの)で。
彼女の手がいつもひどく冷たいのを、主人公の彼はとても憂いている。彼女は体がすごく弱いひとであったので、それも然り。
彼は彼女の手を取るたび、またこんなに冷えてる、と心配のあまりに眉を顰めて、まるで咎めるように言ってしまう。
彼女はそんな彼の態度に、黙って苦笑を返すんですが。


彼女にはお兄さんがおりまして、お兄さんの方は主人公と同じように心配はしていても、
「手の冷たいのは、上等な女の証しだよ」
とか何とかまことしやかに言って、逆にそれを肯定して、喜んで好んでくれる(そういうフリのできる)ような人でして、
彼女の主人公に対する沈黙は、そんなお兄さんのことがあるからなんですが、この部分、彼女の胸の内にあるお兄さんについては、物語を全文彼の一人称に統一していたので、話の中では書けなかったんです。


表立って書けないのを、ちょっと残念に思ったことを、この間、手の熱さを人に指摘された時、ああそういえばと、ふと思い出しました。


視点を一人に固定すると、比較的とっちらからずにすむけれど、書けない裏設定がこうして出てきたりして、正直ちょっと寂しい場合なんかもあります。